離婚を決めたら

1.離婚に際して話し合うこと

どうしても夫婦の関係を続けられず、離婚することになったら、いろいろなことを決めておかなければなりません。特に、子どもがいる場合には、子どもの利益を最優先に決めなければなりません

一般的には、以下のことについて話し合います。
(1)親権者・監護者
(2)子どもへの面会・交流
(3)養育費
(4)慰謝料
(5)財産分与
(6)年金分割
(7)贈与

そして、決めたことは、後日の紛争を防ぐために
(1)公正証書(公証人役場で作成)
(2)離婚協議書(当事者間で作成)
などの書面にして残しておきます。

2.離婚に際して決めておくこと

(1)親権者・監護者

夫婦間に未成年の子どもがいる場合には、親権者・監護者を決めなければなりません。「親権」とは、父母が未成年の子どもを成人に達するまで養育するため、子どもを監護養育し、子どもの財産に関することを内容とする親の権利義務を言います。
「監護者」とは、親権の一部(身上監護権)を有する者のことを言います。つまり、子どもを引き取り、生活を共にし、身の回りの世話をする人のことを言います。通常は親権者と監護者は同一人にしますが、必ずしも、同一人である必要はありません。例えば、夫婦双方が親権を譲らない場合や、父を親権者とすることにしたものの、子どもが乳幼児であるために、母親の養育が必要になる場合などがあります。

なお、調停や裁判になった場合には、以下の事情を目安に決めていくことになります。

・乳幼児の場合には、母親を優先
・養育費や生活費を確保できるかどうか(経済的能力・資産状況)
・離婚後、子どもの養育監護を続けられるかどうか(現実に子どもを養育監護している者を優先)
・子どもの意思(15歳以上の未成年の子どもについては、その意思を尊重する)
・兄弟姉妹の関係を今後どうするか
(血のつながった兄弟姉妹を分かつことは子どもの人格形成やその後の生活に重大な影響を及ぼすため)
したがって、子どもの利益を優先して決めますので、必ずしも母親が親権者・監護者になるとは限りません。

(2)子どもへの面会・交流

未成年の子がいる場合には、父又は母が子どもと会う、あるいは連絡を取るなどの交流をとる機会や方法を決めておきます。

具体的には、 ・頻度(月に何回とか、週に何回とか)
・時間(休日の昼とか)
・会う場所
・子どもに連絡をとる方法(写真を送るとか、通知表を送るとか)
・子どもが会いたくないといったときはどうするか など、子どもの利益を優先して決めます。

なお、相手方が一方的に子どもを実家に連れて帰ってしまって相手方が子どもを他方に
会わせないような場合には、家庭裁判所に面会交流の申し立てをすることができます。

(3)養育費

未成年の子どもがいる場合、親権者は法律上決めなければなりませんが、養育費は、必ず決めなければならないというものではありません。しかし、一度離婚してしまうと、たいていは二度と会いたくないでしょうから、話し合いの機会を持つこと自体が困難になりかねません。

そこで、離婚の際に養育費を決めておくべきでしょう。

養育費は、当事者が合意すればその内容になります。しかし、収入に対してあまりに大きい金額にしたために、かえって支払ってもらえなくなることも多々あります。

目安としては、裁判所のHPに算定表がありますので、参考にしてください。
http://www.courts.go.jp/tokyo-f/saiban/tetuzuki/youikuhi_santei_hyou/

養育費を決めていたけれども、リストラなどで収入状況が大きく変化した場合や、子どもが成人になった場合でも子どもの進学や病気などの事情がある場合などは、家庭裁判所に調停を申し立てて養育費の金額の変更をすることができる場合もあります。

なお、養育費などの支払いを決めた場合には公正証書を作成しておくと、支払いがなかった場合に、給与差し押さえなど強制執行手続きが迅速に行えます

 

(4)慰謝料

「慰謝料」は、離婚それ自体や離婚の原因に対する精神的損害に対する賠償です。
慰謝料の判断に当たっては、
・不倫や浮気(不貞行為)
・相手方に対する暴力行為
・生活費を渡さない
・通常の性的交渉の拒否
・婚姻・別居期間 などの事情が考慮されるでしょう。

慰謝料は、必ずしも離婚の際に決めなければならないというものではありません。しかし、一度離婚してしまうと、たいていは二度と会いたくないでしょうから、話し合いの機会を持つこと自体が困難になりかねません。また、 慰謝料は、不法行為を知った時から3年で時効にかかる場合もありますので注意が必要です。離婚に際して決めておいたほうがよいでしょう。

なお、婚姻中は互いに貞操義務がありますので、不貞行為が原因で婚姻が破綻したというような場合には、婚姻破綻の原因を作出した第三者である不貞行為の相手方にも慰謝料を請求することができる場合があります。ただし、婚姻が破綻した後の不貞行為については、既に貞操義務がなくなっている場合もあり、慰謝料請求ができないか減額されます。

このように、第三者に対する慰謝料請求についても、離婚調停と同時に申し立てる場合には、家庭裁判所に申し立てることができますが、離婚とは別に調停や訴訟で請求する場合には、簡易裁判所(民事調停または請求額が140万円以下の訴訟)や地方裁判所(請求額が140万円を超える訴訟)に申し立てることになります。

また、子どもも、離婚原因を作出した第三者に慰謝料を請求することができます。ただし、この場合には家事調停ではないので、簡易裁判所や地方裁判所に民事調停や訴訟という手続で請求していくことになります。

(5)財産分与

「財産分与」は、婚姻生活中に夫婦が共同で築き上げてきた財産をそれぞれに分かつものです。現金、預貯金、不動産、車両、有価証券、退職金、年金などが財産分与の対象になります。

金銭でなされることもありますが、住宅など不動産でなされることもあります。

なお、当事者間で協議が調わない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることができます。その場合には、夫婦それぞれがどの程度財産形成に貢献しているかによって決められているようです。したがって、収入のない専業主婦でも、家計を支え、生活を維持してきたという家計に対する貢献度もある程度考慮されます。

不動産の財産分与の場合に注意しなければならないことは、住宅ローンが残っている場合に、住宅・土地の名義だけを相手方から財産分与を受けても、住宅ローンの支払いが滞れば、せっかく譲り受けた住宅が競売にかかることもあるということです。

なお、財産分与は、離婚後2年を過ぎると請求できなくなりますので、 協議が調わない場合には、離婚後2年以内に家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります

(6)贈与と財産分与

婚姻中に相手方に贈与をすると、贈与を受けた方に贈与税がかかってくる場合があります。一方、離婚に際して不動産を財産分与した場合には、不動産を譲り渡した方に不動産譲渡所得税が課税されることがあります。なお、居住用不動産を譲渡した場合には、特別控除がありますので、財産価額によっては非課税になることもあります。
財産分与は、お互いの共同生活で築いた財産を分かつものです。相手方に過大に財産を譲り渡すと贈与となり、贈与税が課せられることがあります。詳しくは、国税庁HPを参照ください。
http://www.nta.go.jp/taxanswer/zoyo/4414.htm

(7)年金分割

「離婚時の年金分割制度」は、離婚した時に、婚姻期間中の保険料納付記録を按分割合に応じて当事者間で分割するという制度です。

これには、当事者の合意によって定める「合意分割」と、3号被保険者が請求すれば必ず2分の1が分割される「3号分割」の2つの手続きがあります。

比較すると、以下の表のようになります。

  合意分割 3号分割
対象となる離婚 平成19年4月1日以降にした離婚等 平成20年4月1日以降にした離婚等
当事者 第1号改定者(分割する人)
第2号改定者(分割を受ける人)
第3号被保険者に限らず、第1号被保険者、第2号被保険者でもよい
特定被保険者(分割する人)
被扶養配偶者(分割を受ける人)
第3号被保険者に限られる。
合意 分割すること、按分割合について合意が必要 合意不要
対象となる期間 対象となる離婚等について、その離婚までの婚姻期間(対象期間)
平成19年4月以前の期間も含む
  対象となる離婚等について、平成20年4月1日から離婚までの婚姻期間のうち、第3号被保険者であった期間(特定期間)
按分割合 上記の期間(対象期間)における夫と妻の標準報酬総額の2分の1を上限として、標準報酬総額から算出された下限の範囲内で、定められた割合 上記の期間(特定期間)における特定被保険者の標準報酬総額の2分の1
請求期間 原則として離婚後2年内 制限なし
*第1号改定者

厚生年金保険の被保険者または被保険者であったもので、合意分割で標準報酬額が低額に定められる者(年金分割をされる人)

*第2号改定者

第1号改定者の配偶者であった者で、第1号改定者から標準報酬の分割を受ける者(年金分割を受ける人)

*第1号被保険者

国民年金のみ加入している自営業者・学生など

*第2号被保険者

厚生年金または共済年金に加入している会社員・公務員等

*第3号被保険者

第2号被保険者に扶養されている配偶者(例えば、サラリーマンの妻で、専業主婦の人)で、20歳から59歳までの人

合意分割は、2分の1を上限に、当事者の合意で決めることができます。その場合には、公正証書を作成しなければなりません。合意が調わない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。調停が調わない場合には、「審判」が言い渡されます。審判では、保険料への寄与の程度は、特別の事情がない限り、夫婦お互い同程度(2分の1)となるようです。

また、合意分割の場合は、原則として離婚後2年内に社会保険庁に請求をしなければならず、単に、合意文書を作成したり、調停・審判を取っただけで当然に分割内容に基づいて支払われるものではありません。

3号分割の場合は、平成20年4月1日以降の期間についてしか請求できません。それ以前の婚姻期間中の年金分割については、別途「合意分割」が必要です。

なお、合意分割、3号分割いずれの場合も、自分が保険料納付期間などの受給資格を満たしてから、自分の年金に上乗せして支払われます。

詳しくは、日本年金機構のHPでご確認ください。
http://www.nenkin.go.jp/n/www/index.html

3.離婚協議書の作成

(1)公正証書の作成

例えば、慰謝料や養育費などの金銭の支払など、離婚に際して決めたことを相手が守ってくれない場合に備えて、公正証書を作成しておくことをお勧めします。

公正証書を作成すると、金銭の支払いについて支払が滞った場合に、裁判を起こさなくても、直ちに給与の差し押さえなどの強制執行ができます。

公正証書の作成費用については、日本公証人連合会ホームページでご確認ください。
http://www.koshonin.gr.jp/index2.html

(2)離婚合意書(私文書)の作成

相手が公正証書の作成に協力しない場合には、少なくとも「離婚合意書」を作成しておくべきでしょう。後日、調停や訴訟をする際に証拠となります。

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