離婚後の生活設計

1.離婚家庭への福祉

離婚家庭への福祉制度としては以下のような制度がありますので、詳細は最寄りの市区町村の子育て支援課などへお問い合わせください。
(1)児童扶養手当
(2)ひとり親家庭等医療費助成
(3)母子家庭への貸付制度(母子寡婦福祉資金貸付)
(4)生活保護
(5)母子生活支援施設(母子寮)

詳細は熊本市のHPをご参照ください。
http://www.city.kumamoto.kumamoto.jp/

(1)児童扶養手当

「児童扶養手当」は、母子家庭等の生活の安定と自立の促進に寄与し、子どもの福祉の増進を図る手当です。
次の(1)~(7)に当てはまる18歳に達する日以後の最初の3月までの間(児童に一定以上の障害がある場合は20歳未満)にある児童を扶養している母子家庭の母・父子家庭の父・母または父に代わってその児童を養育している方に支給されます。
児童扶養手当は、扶養する家族の数等によって所得制限が設けられており、受給資格者等の所得によって、児童扶養手当が「全部支給」になるか、「一部支給」になるか、「支給停止」になるかが決定されます。

児童扶養手当の要件

(1)父母が離婚した子ども
(2)父または母が死亡した子ども
(3)父または母が一定程度の障害状態にある子ども
(4)父または母の生死が明らかでない子ども
(5)父または母が1年以上遺棄している子ども
(6)父または母が1年以上拘禁されている子ども
(7)婚姻によらないで生まれた子ども

児童扶養手当の支給を受けるためには、お住まいの市区町村への申請(認定請求)が必要です。申請に当たっては、受給資格者および該当する子どもの戸籍謄本(抄本)や住民票など、世帯の状況が分かる書類、所得の状況が分かる書類などが必要となります。
具体的な手続きや必要書類については、お住まいの市区町村にお問い合わせください。

(2)ひとり親家庭等医療費助成

母子家庭の母と児童及び父子家庭の父と児童、又は父母のいない児童に対し、保険診療における一部負担金の3分の2を助成する制度(所得制限があります。)
・申請時期:母子家庭または父子家庭になったとき、父母のいない児童を養育するようになったとき
・対 象:児童については18歳に達する日以降最初の3月31日まで、母・父については対象児童の20歳の誕生月までです。

詳細は、最寄りの市区町村にお問い合わせください。

(3)母子寡婦福祉資金貸付

母子家庭等の方の経済的自立を援助し、その扶養する児童等の福祉の向上を図るために、市区町村では資金の貸付を行っています。

(貸付を受けることができる方)
(1)母子家庭の母で20歳未満の児童を扶養している方、又は児童本人
(2)父母のいない20歳未満の児童
(3)寡婦(配偶者のない女子で、かつて母子家庭の母であった方)
(4)40歳以上の配偶者のない女子であって、母子家庭の母及び寡婦以外の方
※扶養する子がいない場合は所得制限があります。
※児童が借主となる場合は、連帯保証人が必要です。
※資金ごとに貸付要件があります。詳しくは市区町村の子育て支援課でお尋ねください。

(4)生活保護制度

「生活保護制度」は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。生活保護の相談・申請窓口はお住まいの福祉事務所または町村役場で行っています。

(1)生活保護の要件

生活保護は世帯単位で行い、世帯全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提であり、また、扶養義務者の扶養が生活保護に優先します。

(2)生活調査

生活保護を申請すると、生活状況等を把握するための実地調査があります。調査の内容としては以下のようなことを調査されます。
・預貯金、保険、不動産等の資産調査
・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否
・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
・就労可能性の調査

(5)母子生活支援施設

「母子生活支援施設」とは、配偶者のいない女子、またはこれに準ずる女子で児童の福祉に欠ける世帯を、母子一体として入所し、教育向上、生活指導、学習指導等を行い、母子家庭の福祉の向上を目的とする施設です。入所資格としては20歳未満の子どもがいて、生活上の事情から一人で子どもを養育するのが困難であることです。熊本市内には熊本市大江荘、友愛会はばたきホームの二つの施設があります。

詳細は、最寄りの市区町村の子育て支援課にお問い合わせください。

2.離婚後の戸籍と姓

【離婚後の夫婦の戸籍と姓】

婚姻に際して姓(氏)を変更した者は、原則として、離婚によってもとの姓に戻ります。ただし、離婚から3ヶ月内にあるいは離婚届と同時に、離婚の際に称していた姓を称する届を市区町村役場に提出すれば、離婚後も婚姻中の姓を称することができます。

離婚後の戸籍の選択として、以下の3つが挙げられます。

(1)旧姓に戻り、結婚前の戸籍に戻る(復籍)。

ただし、結婚前の戸籍内の人が死亡等により全員いなくなって除籍になっている場合は、戻れる戸籍がなくなっているため、必ず新しい戸籍を作る必要があります。

また、子供を自分と同じ戸籍に入れる場合も、必ず新しい戸籍を作る必要があります。

(2)旧姓に戻り、自分で新しい戸籍を作る。
(3)婚姻中の姓を継続使用し、自分で新しい戸籍を作る(婚氏続称)。

なお、婚姻中の姓を継続使用して、結婚前の戸籍に戻ることはできません。

【離婚後の子どもの戸籍】

親権者が父母のどちらになっても子の戸籍は離婚前のままです。たとえば、親権者となった母親が離婚後、旧姓に戻った場合、子と母親の姓と戸籍は異なることになります。母親が離婚後も結婚時と同じ姓を名乗る場合も、見かけ上は子と同じ姓とはなりますが、法律的には母親と子の姓及び戸籍は別になります。

【離婚後の子の姓の変更】

父母が離婚し母親が子を引き取ったときにおいて、母親が旧姓に戻った場合、以下のようになります。
離婚前:母親も子も父親の戸籍(ここでは、例として姓を「佐藤」とします)に入籍している。
離婚後:母親だけが父親の戸籍から除籍され、母親は婚姻前の戸籍(ここでは、例として姓を「鈴木」とします)に戻る。
母親の姓は旧姓の鈴木になるが、子は従前の父親の戸籍(佐藤)に残ったまま。母(鈴木)と子(佐藤)の姓が異なってしまうことになります。離婚後、母親が幼い子を引き取り養育しているときに、母親と子の姓と戸籍が異なっているのでは、何かと不便であるといえます。

そこで、子を引き取った母親が、子の姓を母親と同じにして母親の戸籍に入れたい場合は、親権者となっていれば、子の住所地を管轄する家庭裁判所に子の氏(姓)の変更許可の審判の申立てをすることができます(民法第791条)。そして、家庭裁判所の許可審判書の謄本と子の入籍届を市区長村役場に提出します。

しかし、母親が親権者になっていない場合には、母親の側から子の氏の変更許可申立てをすることができません。この場合、(1)親権者である父親からこの申立てをしてもらう、または、(2)親権者変更の審判申立てをして母親に親権者を変更してから、母親が子の氏の変更許可審判の申立てをすることになります。

なお、子が15歳以上であれば、子自らが氏の変更許可申立てをすることができます。また、母親と同じ姓に改めた子は、成年に達した時から1年以内に市区町村役場に届出をすることによって、家庭裁判所の許可をなくして、元の姓に戻すことができます。

3.再婚後の戸籍の動き

(1)夫が初婚、妻は再婚、夫の姓を選択して婚姻するとき

夫は初婚のため、婚姻届を出したときに親の戸籍から抜けて新しい戸籍が作られます。
妻は現在の戸籍から抜けて、夫の戸籍に入ります。

(2)夫が再婚、妻が初婚、夫の姓を選択して婚姻するとき

夫が戸籍の筆頭者になっている場合は、夫自身の戸籍の動きはありません。
妻だけが親の戸籍から抜けて、夫の戸籍に入ります。

(3)夫、妻が共に再婚、夫の姓を選択して婚姻するとき

夫が戸籍の筆頭者になっている場合は、夫自身の戸籍の動きはありません。
妻だけが現在の戸籍から抜けて、夫の戸籍に入ります。

【子連れ再婚の場合】

子なしの夫と子連れの妻(同一戸籍に母と子がいる場合を前提とします。)が再婚するケースは一般的に多いと思います。この場合の、子の戸籍の変遷は以下のようになります。

再婚前:母の戸籍(ここでは、例として姓を「佐藤」とします)に入籍している。
再婚後:母(妻)が夫の戸籍(ここでは、例として姓を「鈴木」とします)に入籍する。
→母の姓が夫の姓(鈴木)に変わりますが、子は従前の母の戸籍(佐藤)に残ったままです。この場合、母(鈴木)と子(佐藤)の姓
が異なってしまいます。また、子は母と再婚した相手の相続人となりません。

この場合の不都合を解消するために、夫が妻の連れ子を養子縁組するという方法と、子の入籍届を提出する方法があります。

(1)養子縁組

養子縁組届を市区町村役場に提出します。この場合、母と再婚した相手と子の間に新しい親子関係が成立し、子は母の再婚した相手の戸籍に入ります。子の続柄は、「養子」と記載されます。また、母の再婚した相手が子の新しい父となるため、子は、相続人となります。また、子は、実の父母の相続人でもありますので、注意が必要です(ただし、特別養子縁組をした場合を除きます。)。

(2)入籍届

家庭裁判所に子の氏の変更許可申立てをして、家庭裁判所の許可後、母の姓を称する入籍届を市区町村役場に提出します。ただし、この方法だと、子は母と再婚した相手の相続人とならないままです。また、養子縁組をするまではないが、妻の連れ子に財産を残してあげたい場合は、遺言書を書いて相続財産財産の受贈者として指定しておくと良いでしょう。

4.再婚について

【再婚禁止期間】

男性は、離婚後すぐにでも再婚することができます。しかし、女性には、民法上再婚禁止期間が定められており、離婚から6ヶ月を経過した後でなければ再婚することはできません(民法第733条1項)。

なぜ女性だけにこのような規定が設けられているかというと、民法では、離婚の成立(婚姻の解消若しくは取消し)の日から300日以内に生まれた子は、前夫の子と推定され、再婚の成立の日から200日を経過した後に生まれた子は、再婚した夫の子と推定されます(民法第772条2項)。そのため、女性が離婚後すぐに再婚し子が生まれた場合、生まれてきた子が前夫の子、再婚した夫の子、どちらの子にも推定されますので、父親が誰かという問題が生じてしまうからです。しかし、6ヶ月の再婚禁止期間を設けることによって、前婚と後婚の推定期間が重ならないため、子の父親がどちらか分からないという事態を回避することができます。

※再婚禁止期間内でも再婚ができる例外として以下の4つが挙げられます。

(1)前婚中に妊娠していた場合

前婚中に妊娠していた場合には、その子どもを出産した日から再婚をすることができます。

(2)医師の証明書を添付した場合(法務省通達)

妊娠をしたと思われる可能性のある日の中で一番早い日が、離婚日よりも後の場合には、出生届出時に再婚した夫をその子どもにとっての本当の父親であるという医師の証明書を添付することで再婚をすることができます。

(3)前夫が3年以上生死不明であることを理由に裁判離婚をした場合

3年以上生死不明の前夫の子どもを妊娠するはずがないためです。

(4)女性が離婚をした前夫ともう一度再婚する場合

たとえいつ妊娠していてもその父親の子どもと推定されますので、再婚を禁止する必要がなくなるためです。

【再婚後の養育費】

養育費を支払う義務のある側は、子の親権を持って育てている側の親が再婚しても、それだけでは養育費の支払を中止する理由にはなりえません。再婚したからといっても前の夫(もしくは前の妻)の子供に対する扶養義務が消えるわけではないためです。

ただし、たとえば、(1)再婚相手と子が養子縁組をして、その再婚相手に経済的な余裕があり、養育費が過剰になっている場合、(2)やむを得ない事情で失業してしまった場合、(3)収入が激減した場合、などは、養育費の減額を求めれる可能性があります。この場合、一番簡単な方法は、具体的な事情を話した上で交渉してみることです。しかし、交渉がうまくいかなかった場合は、家庭裁判所に養育費減額のための調停を申し立てることになります。

また、養育費を受け取る側は、協議離婚について公正証書(執行文言付)を作成していた場合や裁判上の離婚をしていた場合、養育費の支払いが滞ったときは強制的に相手方の給与等財産を差し押さえて支払いを受けることができます。

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